#20 分析の本質、自己分析の方法を書きました
こんにちは。メールを開いていただきありがとうございます。
今回のテーマは 「分析」 です。
今回で20回目の配信になりますが、分析をメインに扱った回が今までなかったので、このあたりで取り上げたいなと思いました。
書いている内容は、
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日常にある 「分析」
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分析の本質とは?
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分析の方法 (切り口と比較)
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社会人こそ自己分析を!
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自己分析の先にあるもの
分析と聞くと難しいイメージがあるかもしれませんが、日常の1コマにも分析はあるんです。
ぜひ最後まで楽しみながら読んでみてください!
本 「考えの整頓」 から
最初にご紹介したい本が、考えの整頓 (佐藤雅彦) です。
著者は、メディアクリエイターの佐藤雅彦さんです。
CM プランナーとして、湖池屋のスコーン・ポリンキー・ドンタコスや、NEC の 「バザールでござーる」 などを手がけたことで有名です。また、NHK 教育テレビ 「おかあさんといっしょ」 で、「だんご3兄弟」 の作詞とプロデュースを務めました。
ポリンキーとドンタコスのテレビ CM 、だんご3兄弟の映像をつけておきますね。よかったら見てみてください!
この本がおもしろかったのは、ともすれば見過ごしてしまう日々の出来事を、著者独自の視点で考察されているからでした。本のあとがきには次のように書かれています。
その連載をする上で守っていたことがひとつあります。
それは、毎回毎回、強弱はあっても、必ず自分の心のどこかに引っかかってきた不明なものを見据えようということでした。そして、その不明なものを、この文章に書くことで少しでも明らかなものにしていこうと思ったのでした。
「面白い」 という言葉は、本当のことが分かって、目の前が開けて明るくなるという語源を持っています。
印象に残ったエピソード
本書の中で印象的だったエピソードは、「 "差" という情報」 でした。
著者はある冬の朝、これから着る Y シャツをオイルヒーターの上に乗せ、少しでも温かくしてから着ようとしていました。
温まったシャツに腕を通した時に、袖が濡れているように感じました。しかし確かめてみると、袖は実際には濡れていませんでした。急いで出かけなくてはいけなかったのに、今の湿った冷たい感触は何だったのかを考え込んでしまいます。
気づいたのは 「温度差」 でした。ヒーターでシャツを暖めようとしましたが、袖と胴体部分で温まり方が均等ではなく袖は冷たいままだったのです。温度差によって、実際には袖は濡れていないのに濡れているという錯覚をもたらし、著者はこれを面白いと感じたわけです。
なぜ 「差という情報」 が印象に残ったのか
この 「差という情報」 というエピソードに、データ分析との共通点があり興味深かったです。
分析とは、何かと何かを比べ、意味のある知見を見い出すことです。
比較をするとは、対象と対象から 「差」 を見つけ (あるいは 「差がないこと」 を確認し) 、それがビジネスの観点から何を意味するかを考えます。
ご紹介した 「差という情報」 では、
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ヒーターで温められた Y シャツの胴体と、(温められなかった) 袖に温度差が生じた
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脳が温度差情報に誤った反応 (濡れているという錯覚) をした
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ここから、「人は情報差によって意味を見い出す」 という解釈がされた
日常の何気ない1コマに分析はあるのです。
ではもう少し、分析について見ていきましょう。
分析の本質
私が思う分析の本質は 「分けて比較をすること」 です。
ビジネスでは分析目的に沿った比較をし、比較から意味合いを見出します。意味合いとは、意思決定や実行への示唆と提言です。
比較のための 「切り口」
比較をするために分析の切り口を決めます。
切り口のイメージを共有するために、りんごを例にご説明しますね。
りんごを分析する切り口
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大きさ
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重さ
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色
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新鮮さ
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甘さ (例: 糖度, 酸度)
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固さ
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種類 (例: ふじ, つがる, 王林)
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栄養成分
これらを切り口としてりんごを比較します。
ビジネスの話に寄せると、分析の目的を 「美味しいりんごを選ぶ」 とすれば、例えば重視する切り口は 「新鮮さ」 「甘さ」 「固さ」 です。
このように分析では無数に考えられる切り口から、分析目的に合った切り口を選び比較をして、示唆を出します。
市場分析の切り口
では、もう1つの分析の切り口の例を見てみましょう。
マーケティング戦略のための市場分析に当てはめてみます。分析目的は市場を理解し、どのセグメント (市場の細分化) を狙うかへの意思決定につながる情報提供です。
ここでは切り口を2つに絞ったとします。価格帯と、プロダクトの独自性 (差異化されているか) を採用しました。
市場分析の流れ
価格帯と独自性の2つを横と縦の軸に使ってマトリクスにすると、次のようになります (◯ は市場にある商品です) 。
市場分析 (価格帯 × 独自性)
ここから、どのセグメントを狙うかを決めます。同時に意図を持って狙わないところも見極めます。
分析からの示唆は、例えば次の通りです。
市場分析からの示唆
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まずは中価格帯で独自のポジションを構築する
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次に高価格帯にシフトし独自ポジションを狙う
図で表すと、
市場分析からの示唆
社会人こそやったほうがよいこと
いきなり話が飛ぶかもしれませんが、私が思う、ビジネスパーソン、もっと言えば社会人こそぜひやったほうがよいと思うことがあります。
社会人こそやるべき2つ
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勉強
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自己分析
世の中の一般的には、勉強は学生の時のほうがやっていた、自己分析は就活の時にはやった (でもその後はやっていない) という方が多いでしょう。
しかし、私の持論はビジネスキャリアをつくっていくためには、学生の時以上に勉強は続け、自己分析は定期的にやったほうがよいというものです。
自己分析の例
ストレングスファインダーをご存知でしょうか?
その名の通り、自分の強みを診断してくれる自己分析のサービスです。みなさんの中には、やったことがある方もいらっしゃるかもしれません。
ストレングスファインダーから、まだ自分がはっきりとは気づいていない潜在的な強み (今後強みになるであろうポテンシャル) も、結果から見えてきます。
私の強み項目の上位は、次の5つでした。
ストレングスファインダーの上位5つ
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戦略性
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学習欲
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達成欲
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未来志向
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最上志向 (強みを伸ばし最高レベルにしたい)
診断結果からの掘り下げ
自己分析で大事にしたいことは、単に診断結果を見て終わらずに、そこからの気づきや実際の仕事につなげることです。
ストレングスファインダーの上位5つから、自分という人間を表現すると、次のようになります。自分のことを言語化できた時、とても腑に落ちた感覚がありました。
理想とする未来を実現するために戦略を立て、
学習を続け、強みを磨き、
1つ1つ目標を達成することが好きな人間。
さらに、これから自分がやっていきたい仕事やビジネスキャリアへのヒントは、例えば次のようなことを思いました。
仕事やキャリアへのヒント
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事業やマーケティング戦略をつくる仕事
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戦略を立てるために未来を見据る。立案のプロセスでは学び続ける
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戦略をつくって終わりではない。実行し、目的達成への各目標を達成することにもコミットする
自己分析が重要な理由
あらためて、なぜ自己分析が重要なのでしょうか?
一言で結論を先に書くと、自己分析によって自分の仕事やキャリアへの具体的なヒントが得られるからです。自分が何をしたいのか、どう選べばよいかのガイドライン、「自分の軸」 になります。
自己分析をやると、次のことが見えてきます。
自己分析から見えてくること
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自分の好きなこと、好きになれないこと
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得意なこと、不得意なこと
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普段の自分の行動や発言の奥にある気持ち、価値観
自己分析から、過去にやっていたこと、現在やっていることの意味合いを理解することができます。そこから、自分が向かう道はどこがよいのか、どこに行きたいと思えるかが、ぼんやりとでも見えてきます。
この、なんとなくでも自分の進む方向性がつかめていることが大事です。
自己分析には、単に過去や現在の自分を理解するだけではなく、これからの方向感覚を持てることに意味があるのです。
比べる相手は自分
自己分析で大切にしたいことです。
それは、振り返る時に比べる相手です。比較する対象は他人ではなく自分です。比較は昔の自分と今の自分、未来の自分と今の自分です。
人はどうしても他人と比較してしまいがちです。しかし他人と比べても劣等感につながったり、表面的な優越感を得るだけで、本質的な学びにはならないと私は考えます。
大事なので繰り返すと、比べる相手はあくまで自分自身です。
自己分析の先にあるもの
これは持論で、自己分析の先にあるのは、自分自身を大切にし信じることです。
自分を信じることを分解すると、自己肯定感と自己効力感があります。
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自己肯定感: 自分の存在を肯定し尊重すること。自分という Being への肯定
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自己効力感: 自分が行うことは 「自分はできる」 という自信。行動なので Doing
自己肯定感と自己効力感は相互関係にあります。
自分のことを肯定しているから、自分の行動に自信が持てます (自己肯定感 → 自己効力感) 。逆の向きもあり、自分はできると認識しているから、自分のことを受け入れ肯定できます (自己効力感 → 自己肯定感) 。
ではどうすれば自己肯定感と自己効力感を高めることができるのでしょうか?
自分を信じる力を高めるために
一言で言えば 「自分で決めて自ら行動してみること」 です。
ポイントは、自分で決めて自ら行動することを1つでも増やすところからです。そのために意識するといいのは、自分がコントロールできる領域の見極めです。
自分が関係している全てをコントロールすることはできません。どこまでが主体的にコントロールできるかと、少しでもコントロール領域を広げるためにどうすればいいかを意識するといいです。
コントロールできることの中で、自分で決め、そして行動につなげてみるのです。
Greatest Love of All
さて、ここまでいかがだったでしょうか?
最後にご紹介したいのは、「Greatest Love of All」 という歌です。ホイットニー・ヒューストンの曲です。
ホイットニー・ヒューストンが歌詞の中で言っているのは、自分自身を大切にし信じることの大切さです。
A lonely place to be (孤独に過ごす中で)
So I learned to depend on me (私は自分自身で生きることを学んだの)
I decided long ago, never to walk in anyone's shadow (ずっと前に決めたの。誰かの陰で生きるのはやめるって)
If I fail (私が倒れようと)
If I succeed (成功しようと)
At least I live as I believe (少なくとも自分の信じる通りに生きると)
No matter what they take from me (私から何を取り上げたって)
They can't take away my dignity (誰にも尊厳だけは奪わせないわ)
今日のアクション
そろそろ今回のレターも終わりです。ここまで読んでいただきありがとうございます。
このレターの毎回に共通するコンセプトは 「Question Insights Action」 です。意味は、問いかけに対して示唆を得て (Insights) 、半歩でもいいので行動につなげてみませんか (Action) 、というものです。
今回のキーワードは 「分析」 でした。レターで残したいアクションへのきっかけは、
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見ている対象を分解するために、どんな 「切り口」 を選びますか?
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自己分析から自分を掘り下げてみませんか?
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分析から何につなげますか?
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レター作成者
多田 翼
Aqxis 合同会社 代表 (会社概要はこちら)
経歴
Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立。Aqxis 合同会社を設立し代表に就任。Google 以前はインテージにてマーケティングリサーチ業務に従事。
京都大学大学院 工学研究科 修了。
主な事業
マーケティング, マーケティングリサーチ, 事業戦略などのコンサルティング事業
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