#6 2021年につなげる 「空雨傘」 からの一年の振り返り方法
こんにちは。多田翼です。
今回は少し早いですが、今年2020年を振り返るレターです。私自身のこの1年を例に、振り返る方法とポイントをご紹介します。
このレターを読んでいただければ、その場限りで終わる通信簿のような振り返りから卒業でき、効果的な振り返り方法を知ることができると思います。このレターを1年を振り返る時の参考にしてもらえればうれしいです。
振り返りを大切にしている理由

まずは振り返りが、そもそもなぜ重要かについてです。
振り返りの前提にあるのは PDCA (Plan - Do - Check - Adjust) です。私は PDCA の考え方と方法を大事にしています。
ちなみに、PDCA の Plan を他のものに置き換えたものも意識して活用するようにしています。 PDCA の P を入れ替えたものとは、次のようなものです。
PDCA の応用 (P の置き換え)
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Plan ではなく Prototype (試作品) とする PDCA [試作の検証サイクル]
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Hypothesis (仮説) にした HDCA [仮説の立案と検証サイクル]
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Strategy (戦略) にした SDCA [戦略の実行と検証サイクル]
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Idea に変えた IDCA [アイデア実行と検証サイクル]
いずれも大切にしたいのが、実行のやりっぱなしで終わらず、振り返りをして気づきや学びを得ることです。教訓が次の Plan につながります。
比べる相手は自分
大切にしたいことをもう1つです。振り返る時に比べる相手は誰かです。
比較する対象は他人ではなく自分です。例えば1年の振り返りであれば、比較する相手は去年の自分と今の自分です。
人はどうしても他人と比較してしまいがちです。しかし他人と比べても劣等感につながったり、表面的な優越感を得るだけで、本質的な学びにはならないんですよね。
大事なので繰り返すと、比べる相手はあくまで自分自身です。
ではここからは1年を振り返る方法を具体的に見ていきましょう。
プラスとマイナスからの振り返り

振り返る時には始めから詳細に入っていくのではなく、振り返りに使うフレーム (切り口) を決めるといいです。
私が振り返りをする時によく使うフレームは、プラスとマイナスです。以下の4つのうち2つがプラス、残りの2つがマイナスです。

プラスとマイナスからの振り返り
4つに共通するのは行動に注目していることです。1年間でどんな行動がプラスされたか、そしてどんな行動をマイナスにしたかを振り返るようにしています。
2020年の行動変化
では私の例になりますが、このフレームの使い方をご紹介します。
まずはプラスからです。プラスとは 「増やしたこと」 と 「新しく始めたこと」 でした。
この1年を振り返った時に、増えたことは仕事の幅です。コンサルティングの仕事で入る案件がより多様になりました。顧客の広がりと案件の数の両方です。
新しく始めたことで印象に残っているのは、法人の設立です (こちらは後ほど詳しく触れますね) 。
では、マイナスの 「減らしたこと」 「なくしたこと」 はと言うと、仕事での移動と直接会ってのやりとりが減ったり、なくなりました。
例えば顧客のオフィスへ行くことが極端に減りました。直接会ってのコミュニケーションはメッセージとビデオ会議が中心になったのも今年2020年の特徴です。クライアントによっては、全てがオンラインでのコミュニケーションになったところもあります。
「空雨傘」 で行動と意味を掘り下げる
ここまで、2020年の振り返りとして行動にフォーカスして見てきました。ここからはさらに掘り下げてみましょう。
今回のレターには 「振り返りが単なる通信簿になってないか」 という問題提起を入れています。その心は、振り返りが ◯ ✕ だけをつけるような表面的なものになっていないかです。
ここへの提案でご紹介したいフレームが、「空・雨・傘 (そら・あめ・かさ) 」 です。
ロジカルシンキングのフレームワークの1つです。

引用: キャリ ch
空は事実の把握です。空模様から雨が降りそうだと解釈をして、傘を持って外出するという結論を出し行動に移します。
ビジネスでの使い方は、例えばスーパーマーケットの売場で当てはめると、
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来店客の店内行動を観察 [空: 事実]
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売場で不便なところを発見 [雨: 解釈]
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お客が買いやすい売場づくりをテスト的にやってみる [傘: 行動]
それでは、この 「空雨傘」 を振り返りに使ってみましょう。私自身の1年の振り返りとして、法人設立とリモートワークの2つからご紹介しますね。
会社設立の振り返り (設立理由)

2020年のハイライトの1つは会社の設立です。Aqxis 合同会社を設立しました。
会社を設立したいと思った理由は、次の3つからでした。
会社設立を決断した理由
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次のステージへの挑戦
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社会的信用の向上
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責任と自覚
それぞれについて順番に説明させてください。
[理由 1] 次のステージへの挑戦
もともと私が独立をしたのは、5年5ヶ月働いた Google を辞めてからでした。
その後は個人事業主でフリーランスになりおよそ2年が経ちました。フリーランスでの2年間で、独立して働くことの難しさとやりがいを経験することができました。
次のステージは何かと考えた時に個人事業主から法人にして、新しい挑戦をするタイミングだと考えたのが1つ目の理由です。
[理由 2] 社会的信用の向上
フリーランスで働くのに大きな支障があったわけではありません。
ただ企業によっては一個人との契約が、対企業との契約よりも進みにくいと感じることがありました。社会的信用を考えるとフリーランスよりも法人としてやっていくほうが高まると考えました。
法人になることによって、より円滑に事業を続けたいと思ったのが理由の2つ目です。
[理由 3] 責任と自覚
法人として仕事を獲得し、お客への価値提供により一層の責任感を持ちたいです。
自分が会社の代表になり、仕事や生き方への責任と自覚を持てると思い法人の設立を決断しました。
会社名に込めた想いと今後
では、「空雨傘」 を使って法人設立を振り返ってみます。
空は実際の事実としての行動なので、ここでは法人設立です。
私にとっての雨 (解釈や評価) は会社名に込めた意味です。設立した会社の名前は 「Aqxis」 です。アクシスと読みます。会社名に込めた意味は2つあります。
1つは英語の Axis (軸) からです。お客の経営や事業、マーケティングの根幹部分に貢献したいという想いからです。
もう1つは 「Action from Questions and Insights」 の頭文字からです。仕事で大切にしたい考え方で、「良質な問いからインサイトを抽出しアクションをつなげる」 です。
ちょっと細かいですが、Aqxis の中央にある 「qxi」 には、「Questions × Insights」 の掛け算の意味もあります。
振り返りからの次の行動 (空雨傘の傘の部分) は、会社名に込めた意味に恥じない仕事をすることです。
1つ1つの案件と顧客を大切にしての実績を重ねたいです。広げすぎず、深さを追いたいと考えています。
では、空雨傘を使った振り返りの2つ目の例です。今年のもう1つのトピック 「リモートワーク」 について、空・雨・傘の3つに当てはめてみます。
リモートワークの空雨傘

2020年の漢字が 「密」 だったように、今年はほぼ1年を通してコロナ禍だった年でした。
働き方も影響を受け、多くのビジネスパーソンがリモートワークを日常的に取り入れるようになりましたよね。
オフィスへの出社や移動が減ったのが、私の今年の 「減らしたこと」 と 「なくしたこと」 のトピックの1つです。これが空雨傘の 「空」 です。減らしたりなくした結果、事実としてリモートワークがメインになりました。
では空から、リモートワークの意味合い (雨) と今後 (傘) について掘り下げてみましょう。
リモートワークというオフィス以外から働くことは、ネットでつながっているというオンラインが前提になります。特にホワイトワーカーの仕事ではあらゆることがオンラインになっていきます。
これが意味するのは2つで、「オフラインの希少化」 と 「脳の仮想移動」 です。
オフラインの希少化
仕事の多くがオンラインで代替できるようになってくると、オフラインの希少性が上がります。
リモートで人と不自由なく会え、現場をリモートから見ることができるからこそ、直接人と会ったり、現場に足を運ぶというオフラインに希少価値が出ます。
今後はリモートで代替できるにもかかわらず、手間がかかり時間と労力を使ってのオフラインでのビジネス活動の意味が、より問われてくるようになります。
オフラインには希少性があるという認識を持ち、その価値を最大化させることがビジネス全般で求められます。オフラインという希少なことの価値をいかに最大化できるかです。ここで差別化できるプレーヤーが、今後生き残っていきます。
脳の仮想移動
リモートワークを別の観点から掘り下げてみます。
仕事でオフィスではなく自宅などの外部からリモートワークをするとは、脳の仮想移動です。
これまではオフィスという特定の場所に関係者が集まり仕事をしていました。身体も脳も一箇所に集約する仕事のやり方です。
一方のリモートワークとは、身体は自宅のオフィス外からですが、イメージとして脳はネット上の仮想空間に集っている感覚です。
未来の世界では VR (仮想現実) が普及すれば、今の脳だけではなく人間の身体全体が仮想移動をしてのワークスタイルが未来の当たり前になるでしょう。
振り返り方の全体像
ここまでの話をまとめますね。
今年2020年を振り返る例として、会社設立とリモートワークを取り上げました。空雨傘のフレームでまとめると、2つは次のようになります。

法人設立の振り返り

リモートワークの振り返り
今日のアクション
今回のレターでの問いかけは、「今年2020年は、あなたにとってどんな1年でしたか」 と 「どんな行動をして、どのような意味があり、来年につなげますか」 でした。
振り返りの方法でご紹介したのは、2つのフレームでした。1つは行動に着目したプラスとマイナス (増やした, 新しく始めた, 減らした, なくした) 、もう1つは空雨傘です。
この2つを掛け合わせると、次の図のようになります。

振り返り方の全体像
あなたにとっての今年2020年は、どんな年でしたか?
年末の忙しい日が続いているかもしれませんが、ぜひ少しでも立ち止まって1年の振り返りをしてみてください。よかったら上の図の空欄を埋めて、振り返りからの気づきを来年につなげてみませんか?
お知らせ
このニュースレターを新しく始めたのも今年からでした。あらためて、レターをいつも読んでいただきありがとうございました。
今年のレターは今回で最後です。次回は年明けを予定しています。来年もこのニュースレター 「Question, Insights, Action」 をよろしくお願いします。
少し早いですが、良いお年をお迎えください!
質問箱への回答
前回のレター配信後に質問箱に質問をいただきました。質問は 「多田さんはどのような幼少時代を過ごしてきましたか」 です。
質問箱の回答には、次のことをテーマにお答えしました。
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生い立ち
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性格
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好きだったこと
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今の仕事・ビジネスにつながっていること
このレターでは4つ目の 「今の仕事・ビジネスにつながっていること」 を抜粋しますね (全文はこちらからどうぞ) 。
子ども時代は、性格は負けず嫌いで勝ちたい気持ちが強かったです (これは今もですが) 。しかし現実には逆立ちをしても勝てない人が世の中にはたくさんいることも、物心ついたときには理解していた記憶があります。
子どもの時に考えていたのは、今思えば比較優位でした。
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自分が勝てる場所はどこか
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何なら自分は相対的に有利になれるか
例えば野球に当てはめれば、ホームランバッターではなくポテンヒットやフォアボールでもいいので出塁率で自分は勝負する、バスケットならパスや決して派手ではないロングシュートです。
大人になっての今につながっているのは、相対的に自分の強みが発揮できる意識を持つことです。自分の特徴はどこでなら発揮できるかをよく考えています。
戦略とマーケティング、働く環境でも戦場を主体的に選ぶ意識を持つようにしています。
質問・リクエストを募集しています
もしご質問やリクエストがありましたら、こちらの匿名の質問箱にぜひコメントください!
いただいたご質問やリクエストはレターでも取り上げられればと思っています。
それでは次回またお会いしましょう!
レター作成者
多田 翼
Aqxis 合同会社 代表 (会社概要はこちら)
経歴
Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立。Aqxis 合同会社を設立し代表に就任。Google 以前はインテージにてマーケティングリサーチ業務に従事。
京都大学大学院 工学研究科 修了。
主な事業
マーケティング, マーケティングリサーチ, 事業戦略などのコンサルティング事業
※ お問い合わせは会社 HP からご連絡ください
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