#42 常識を変えたマーケティング5選。「その手があったか!」 な事例を解説

[レター概要] 誰も疑問に思わず、当たり前のように存在する固定観念は、ひっくり返されれば大きなインパクトをもたらします。今回は常識を変えた事例ベスト5と、関連するおすすめ本をご紹介します。
多田 翼
2021.09.09
誰でも

こんにちは。メールを開いていただきありがとうございます。

今回は、レターの読者の方からいただいたご質問からです。すでに一次回答は質問箱の Peing でさせてもらったのですが、このレターではもう少し掘り下げて書いています。

今回のレターからわかる内容は、

  • いただいた質問 (マーケティング施策のベスト 5 は?) 
  • 常識を変えたマーケティング5選
  • 業界の常識を覆したロングセラー商品 (5つから1つをピックアップ) 
  • おすすめの本のご紹介 (2冊) 


本文に入る前に、質問やリクエストを募集しています。匿名の質問箱なので、こちらから気軽に質問をいただければと思います。

読者からのご質問


まずは質問をいただきありがとうございました!

すでに回答はしたのですが、レターではマーケティング施策を広く捉えて5つをご紹介します。5つの共通点は 「それまでの常識を覆したこと」 です。

少し個人的な話ですが、これまでの常識を覆すような新しい商品やサービス、マーケティングの考え方と手法に出会った時に、1人のマーケターとしてテンションが上がります。これまでの常識とは、業界やカテゴリーで当たり前のように思われ続いていたことで、誰もそこに疑問の目は持たず前提として存在していたものです。

固定観念が強く根深いほど、ひっくり返した時のインパクトは大きいです。こうした常識を変えた事例を見た時には 「やられた」 とか 「その手があったか」 と思えるんですよね。

では、常識を覆した事例を見ていきましょう。

常識を変えたマーケティング5選

5つの事例は次の通りです。なお、思いついた順番なので順位ではないです。

常識を変えた事例

  • 旭山動物園
  • カラフルなランドセル (イオン) 
  • AKB 48
  • おとなのふりかけ
  • 三井越後屋のシェアリングサービス (江戸時代) 


では順番にご説明していきますね。

旭山動物園

これは有名な事例なので、詳細はそこまで深くは触れませんが、旭山動物園が変えたのは、一言で言えば 「動物の見せ方」 です。

引用: <a href="https://4travel.jp/travelogue/11073241">4travel</a>
引用: 4travel

 「行動展示」 という動物本来の生態に近い行動を見せるというコンセプトが、当時の動物園の見せ方とは一線を画していました。それまでは動物の姿形をそのまま見せる 「形態展示」 が主流でした。

行動展示は、動物の動き、美しさ、尊さを伝えることを目的にしています。従来の動物園の常識を変え、かつ入場者数を飛躍的に伸ばし一時は閉園の危機にまで陥っていた旭山動物園を見事に復活させました。

カラフルなランドセル (イオン) 

2つ目の常識を変えた事例は、イオンの 「はなまるランドセル」 です。特徴は24色もあるカラーバリエーションです。

引用: <a href="https://www.aeonretail.jp/kidsschool/lineup/hanamaru24/">イオン</a>
引用: イオン


昔はランドセルといえば男の子は黒、女の子は赤でした。

そんな常識を色鮮やかに覆したてくれたのが、イオンのカラフルランドセルです。初めて登場したのは2001年でした。

今ではすっかりカラフルなランドセルが定着しましたよね。近所の小学生も水色や紫などの鮮やかな色のランドセルを見かけます。さらに1色ではなく、ランドセルの縁が違う色になっている2色使いのものも珍しくありません。

イオンがやったことは色のバリエーションを増やしただけで、後から考えれば誰でも思いつくことに見えますが、長年の常識にとらわれているとこうした発想は出てきません。ランドセル業界の常識を変えた画期的な事例です。

AKB 48

3つ目の事例は AKB 48 です。アイドルの固定観念を覆しました。


AKB 48 のコンセプトは 「会いに行けるアイドル」 です。

握手会や CD に付いた専用チケット (各種投票券や握手会等のイベント参加) 、総選挙やじゃんけん大会による順位決めなど、ファン参加型で社会現象まで起こしました。

こうした事例は AKB 48 だけではなく、それ以前にも 「モーニング娘。」 や、もっと前では ASAYAN (あさやん) のテレビ番組で行われていました。AKB 48 はファンを巻き込んでいく手法の象徴的な存在です。一般的にアイドルは完成され、裏側は見せないイメージですが、AKB ではメンバーの葛藤や争いをオープンにし、かつそこにファンを熱狂させ、お金を動かした事例です。

おとなのふりかけ

4つ目の事例は永谷園の 「おとなのふりかけ」 です。

引用: <a href="https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000056.000020257.html">PR TIMES</a>
引用: PR TIMES


ふりかけにはどこか 「ふりかけ = 子どもが食べるもの」 という固定観念がありますが、この常識を変えました。

 「おとなのふりかけ」 については、この後に5つからのピックアップとして詳しく書いているので、ここでは5つ目の事例を続けて見ていきましょう。

三井越後屋のシェアリングサービス (江戸時代) 

江戸時代の古い事例ですが、三井越後屋が雨の日に当時は高級品だった傘を町民に無料貸し出した話です。やっていることは現在で言う 「傘のシェアリングサービス」 です。

引用: <a href="https://intojapanwaraku.com/culture/163320/">warakuweb</a>
引用: warakuweb


傘には 「越後屋」 と書かれていて、今で言う企業やブランドロゴが入った傘を大勢の人に使ってもらい 「歩く広告塔」 にするマーケティング施策でした。また、傘を借りた人は後で傘を返すために越後屋に行くので、来店促進の施策でもあります。

ここでのポイントは、町民にも重宝される物を無料で配るという 「損して得取れ」 です。越後屋のイメージや好感度アップ、来店や売上増につなげました。

***

ここまで常識を変えたマーケティングの事例を5つご紹介しました。

ではここからは5つのうち、1つをピックアップして深掘りをしていきます。4つ目の 「おとなのふりかけ」 にフォーカスを当て開発秘話、商品開発やマーケティングに学べることを見ていきます。

常識を変えたふりかけ

常識を変え今もあるロングセラー商品なのが、永谷園の 「おとなのふりかけ」 です。発売されたのは平成元年 (1989年) でした。

引用: <a href="https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000145.000020257.html">PR TIMES</a>
引用: PR TIMES


開発のきっかけ

 「おとなのふりかけ」 の開発の始まりは、担当者が消費者データを見ていての気づきからでした。

以下は永谷園の公式サイトからの引用です。

ふりかけ市場でたくさんのメーカーがしのぎを削る中、永谷園も新たなヒット商品を世に送り出すために日々研究を重ねていました。

そんな時、担当者が消費者データを検証していたところ、興味深い事実に気付きます。ふりかけは、11歳までの子どもにはほぼ 100% 食べられている人気メニューでありながら、大人になろうとする12歳から急に需要が減少していたのです。つまり、消費者にとっては 「ふりかけ = 子ども商品」 という図式があることが判明したのです。

今後ふりかけ市場が成長していくためには 「ふりかけ = 子ども商品」 という既成概念を打ち破らなければいけない。そう考えた担当者は、「子どもだけではなく、大人も満足できるふりかけ」 をテーマとした新商品の開発プロジェクトを発足させました。
引用: 永谷園

大人に満足してもらうために

商品開発では 「大人が満足するふりかけ」 を実現するために、素材、パッケージ、ネーミングから様々な工夫がされました。

素材では、海苔は、本来の色鮮やかさや独特の風味を残すことにこだわったそうです。パッケージは、大きな白地の窓に商品名を黒字で入れ、高級感を演出しました。

ネーミングは 「おとなのふりかけ」 というストレートな商品名にしました。

CM も印象的です。「子どもの目から見た大人の世界」 という構図で描かれています。当時の CM が YouTube で見つかったので、付けておきますね。

 「おとなのふりかけ」 から学べること


それではここからは、「おとなのふりかけ」 から商品開発やマーケティングに学べることを掘り下げていきます。

2つあります。


学べること

  • 先入観にとらわれない機会発見
  • 明確なコンセプトからのマーケティング施策


では順番に見ていきましょう。

先入観にとらわれない機会発見

 「おとなのふりかけ」 の開発のきっかけは、データを見て12歳以上での需要が減っていることを発見したことからでした。

先ほどの引用内ではさらっと書かれてはいましたが、消費者データを見てこの状況に課題意識を持った担当者が秀逸でした。

というのは、「ふりかけ = 子どもが食べるもの」 という暗黙の了解があり常識になっていると、データで12歳以上の人がふりかけを食べていないことがわかっても、気にも留めずに素通りしまったはずです。それまでは大人向けのふりかけはどこも出してはいなかったわけです。

先入観にとらわれないビジネスチャンスを見出せたことが、常識を変えるヒット商品につながりました。

明確なコンセプトからのマーケティング施策

永谷園は、子どもしか食べないというふりかけの常識に機会を発見し、コンセプトを明確にしました。「大人が満足できる大人向けのふりかけ」 です。

コンセプトが決まりターゲット顧客を絞ると、商品開発やマーケティング、販売でやることが明確になります。「おとなのふりかけ」 の場合は、素材、パッケージやネーミング、CM でコンセプトからの一貫性があります。

素材は例えば海苔へのこだわり、味はふりかけでは当時はめずらしい 「わさび」 をつくりました。パッケージは高級感を出し大人向けをアピールしています。ネーミングは 「おとなのふりかけ」 とストレートに訴求しました。

CM は、小さい子ども目線で大人 (お父さんとお母さん) が夜に美味しそうに食べている様子を羨ましいと思う子ども目線で描き、大人向けのふりかけであることを印象的に訴求しています (CM の動画はこちら) 。

以上のように、当時のふりかけの常識から振り切りコンセプトを 「大人向けのふりかけ」 と明確にしたからこそ、商品開発やマーケティングで 「やること」 と 「やらないこと」 が定まったのです。

30年以上のロングセラーに

発売されたのは1989年の平成元年で、「おとなのふりかけ」 は、ふりかけは子どもだけではなく大人も食べたいものに変え、それまでの常識を覆しました。

令和の今もスーパー等で売られているロングセラーです。

最後に、発売からの 「おとなのふりかけ」 の歴史をつけておきますね。

引用: <a href="https://www.nagatanien-hd.co.jp/csr_report/feature_otonanofurikake.html">永谷園</a>
引用: 永谷園

***

今週のおすすめ本

今回ご紹介する本は2冊です。

取り上げた5つの事例に関連して、1冊は旭山動物園、2冊目は三井越後屋の本です。

<a href="https://amzn.to/3DM4B0X">〈旭山動物園〉革命 - 夢を実現した復活プロジェクト (小菅正夫) </a> ※ 著者の著者の小菅さんは旭山動物園園長の方です
〈旭山動物園〉革命 - 夢を実現した復活プロジェクト (小菅正夫)  ※ 著者の著者の小菅さんは旭山動物園園長の方です

旭山動物園の再生に至るまでの、職員や飼育員の方々の努力と工夫が書かれています。動物のことだけではなく、ビジネスの視点で経営や組織開発が学べる本です。Amazon はこちら

2冊目は三井越後屋の本です。

江戸時代から現在まで続く一大財閥 「三井グループ」 を形成した越後屋のビジネスモデルを解説している本です。Amazon はこちら

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***

レター作成者

多田 翼
Aqxis 合同会社 代表 (会社概要はこちら

主な事業
マーケティング, マーケティングリサーチ, 事業戦略などのコンサルティング事業
※ お問い合わせは会社 HP からご連絡ください

経歴
Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立。Aqxis 合同会社を設立し代表に就任。Google 以前はインテージにてマーケティングリサーチ業務に従事。
京都大学大学院 工学研究科 修了。

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