#40 自分の強みを見つけ活用する方法。カップヌードル50周年コラボから学べること
こんにちは。メールを開いていただきありがとうございます。
今回のレターは、ラーメンとトンカツの話です。一見すると 「何のこと?」 と思ったかもしれませんが、2つには共通点があるんです。
ちゃんと説明をすると、このレターからわかる内容は次のようなことです。
前半
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京王プラザホテルとカップヌードルの50周年記念コラボ
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異色のコラボの意味合い
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それぞれのメリット
後半
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トンカツをスーパーで買うのはなぜ?
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アウトソースをする理由
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自分の 「強み」 が選ばれる理由になっているか
では早速、中身に入っていきましょう。
50周年記念コラボ

引用: 京王プラザホテル
京王プラザホテルとカップヌードルが50周年記念コラボが実現されました。今年2021年は、京王プラザホテルは開業後50年、カップヌードルも発売から50年です。
ホテル館内のレストランとバーで、カップヌードルを使った特別料理やカクテルを提供します。期間限定で2021年8月31日までです。
日テレで紹介されたテレビ番組の動画も付けておきますね。
以下は日経 MJ の記事からの引用です。
ホテルの担当者は 「これまでなかったアレンジメニューで新しい魅力を楽しんでもらいたい」 と述べる。
和食レストラン 「かがり」 は 「カップヌードル御膳」 を3800円で提供する。カップヌードルを使った炊き込み御飯のほか、銀だらの味噌焼きなどを用意する。中華レストランの 「南園」 は神戸牛とカップヌードルに入っている味付け豚肉ミンチ 「謎肉」 を使ったチャーハンを販売する。
ビュッフェレストランではカップヌードル8種類を使用したメニューを用意。ホテル伝統のカレーと 「カップヌードル欧風チーズカレー」 のコラボをはじめ、焼き菓子やチョコレートムースにもアレンジを加えた。
バーでは特別カクテルを用意した。「カップヌードル シーフード ウォッカベース」 (1650円) 、「カップヌードル バーボンウイスキーベース」 (1750円) などカップヌードルの風味を生かした4種類のカクテルを販売する。
1人あたり1万6900円からの宿泊プランも提供し、朝夕食とカップヌードルカクテル1杯がセットになっている。
ではここからは、異色のコラボの意味合いをマーケティングの視点で掘り下げてみます。
異色コラボの意味合い
「異色」 と表現したように、一見するとありえない組み合わせで斬新なほどコラボは注目を集めます。コラボではシナジー (相乗効果) が生まれ、相乗効果の中に 「乗」 の文字があるようにお互いの強みの掛け算の効果が期待できます。
ご紹介している京王プラザホテルとカップヌードルの記念コラボに当てはめると、開業50年を迎える大手ホテルと、庶民的な食べ物であるカップヌードルの組み合わせがおもしろいです。
先ほど見たように、次のようなメニューが提供されます。
コラボのメニュー内容
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レストランでの御膳料理
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中華料理店やビュッフェでの料理
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バーでのカクテル
写真を見るだけでもユニークな料理やドリンクが並んでいます。




引用: 京王プラザホテル
50周年の歴史という共通点を単独でアピールするのではなく、コラボによるお互いがお互いのブランドを高め合う相乗効果が生まれます。
では、京王プラザホテルとカップヌードルそれぞれのメリットについて見ていきましょう。
京王プラザホテルにとってのメリット
京王プラザホテルはカップヌードルとのコラボレーションによって認知度を上げられます。
また、普段は来ないようなお客さんにホテルに足を運んでもらえます。カップヌードルとのコラボ企画が呼び水になるわけです。たとえ当日はレストランだけの利用だったとしても、京王プラザホテルの雰囲気やサービスを体験でき良い思い出を持ち帰ってもらえます。これが京王プラザホテルのブランドにつながります。
この体験が、次にホテルを利用する時に京王プラザホテルのことを思い出してもらえ、自分たちが選ばれやすくなります。
メリットをまとめると、
京王プラザホテルにとってのメリット
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認知度の向上
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新規の来客増
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良いホテル体験から次も選ばれる
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ブランド形成
カップヌードルにとってのメリット
では、一方のカップヌードルとってのメリットも見てみましょう。
カップヌードルはコンビニやスーパーでは必ず売られていて、すでに知名度は十分高いです。今回の50周年記念コラボによってカップヌードルを新しく知る人はいなくても、久しぶりにカップヌードルを食べたくなる気持ちを生み出せます。これが1つ目のメリットです。
異色のコラボを知って京王プラザホテルに食べに来てくれるのはありがたいですが、コラボ中に消費されるカップヌードルの量はコンビニやスーパーで普段買われる量に比べると多くはありません。ここだけを見るとカップヌードルの経済的メリットは限定的です。
それよりも 「京王プラザホテルでのカップヌードルを食べる体験」 から、その後の普段の食事の時にも候補としてカップヌードルを思い出し食べてもらう効果を期待できます。コンビニやスーパーのお店でカップヌードルを見た時に京王プラザホテルでの記憶が甦り、良い思い出とともにカップヌードルを手にとって買ってもらうことを狙います。
また、カップヌードルはおもしろい企画をやるという消費者からのブランドイメージにもつながります。
以上のカップヌードルのメリットをまとめると、
カップヌードルにとってのメリット
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しばらく食べていなかった人のカップヌードルを思い出してもらえる (ブランド想起)
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京王プラザホテルでのコラボ体験・良い思い出から、普段の食事にカップヌードルを選んでもらえる
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ブランド形成
ここまでがレターの前半です。異色コラボからお互いの強みが掛け合わさり、どのようなメリットが生まれるかを見てきました。
異色では後半は 「トンカツ」 についてです。急に話が変わると思われたかもしれませんが、前半のコラボとも内容はつながるので、よかったら続けて読んでみてください。
トンカツをスーパーで買う理由

ご紹介したい考え方があり、名前を 「トンカツ理論」 といいます。これは私が尊敬するマーケターの方で、佐藤義典さんが提唱するマーケティング理論の1つです。
トンカツ理論とは、トンカツを自宅で食べたい時に、自分で作らずスーパーで買う理由を整理すると、企業が外注 (アウトソース) する理由に当てはまるというものです。具体的には、次の5つにまとめられます。
トンカツを自分で作らずにスーパーで買う理由
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そもそも自分ではトンカツを作れないから
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スーパーで買った方が楽で早いから
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スーパーで買った方が (自分で材料をそろえるより) 安く済むから
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スーパーの方が自分より上手に作れるから
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スーパーで買った方がトンカツの味の選択肢が多いから
トンカツは具体例なので、トンカツではなくてもコロッケなど揚げ物や惣菜コーナーで買えるメニューに置き換えてもいいです。ハンバーガーなどのファストフードにも当てはまります。
トンカツをお店で買う理由を一般化すると
ここまで見たトンカツをスーパー等で買う5つの理由は、一般化すると大きく3つに整理することができます。
お店で買う理由の一般化
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自分にはできないから、外で買ってくる
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自分でもできるが、外で買う方が手軽、早い、安く済む
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自分でもできるが、外で買う方が高品質、または種類が豊富
これらをビジネスに当てはめると、自分ではない誰かに何かをやってもらう理由になります。具体的には、企業が自社業務を他の企業に外注 (アウトソース) する理由です。
アウトソースをする理由
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自社にはできないから、外注先にやってもらう
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自社でもできるが、外注するほうが手軽で早い。自社でコストをかけるより外注費のほうが安い
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自社でもできるが、外注先のほうがアウトプットが高品質、対応の幅や種類が豊富
逆の視点から考えると
ここで、逆の視点で見てみます。
外注する側ではなく、受け手、つまり自分たちが発注される側になってみます。すると、どうすれば発注してもらえるか、案件や注文を取れるかを考えるヒントになります。
アウトソース理由を受け手側の視点に変えると自分たちが発注される理由になり、次のようになります。
発注してもらえる理由
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発注元にはできないことを自分たちはできる
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自分たちのほうが早く、安く済ませられる
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自分たちのほうがより良いものを提供できる。対応できることが多様なので、発注元にとって選択肢の幅が広がる
では一度、ここまでの内容を整理してみます。
大きく3つで、最初に京王プラザホテルとカップヌードルの異色コラボ、次にトンカツを例にアウトソース理由、そして、立場を逆にして自分たちが発注してもらえる理由を考えてきました。
ベースにある共通点は 「いかにして自分たちが選ばれるか」 です。コラボやアウトソースをするとは、適切な相手をいかに選択するかです。そして自分たちが選ばれるとは、自分 (たち) がそれだけ強みを持っているからです。
個人の強みの棚卸しに応用

ここまでの話は、個人のレベルでも応用できます。例えば、自分の仕事における強みは何かです。
例えばの話で、上司や同僚、他の部署の人から自分が仕事を依頼されたとします。これは相手にとってはアウトソースをした、自分の立場から見れば発注が来たという状況です。
自分がなぜその仕事を得られたかの理由を掘り下げると、自分の強みを知るヒントになります。
選ばれた理由
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自分にしかできないことなのか
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他の人にもできるが自分のほうが誰より早くできるからなのか
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自分のほうが他人より成果が出せるからなのか
どの理由で自分が選ばれたのかがわかれば、自分の仕事での 「強み」 を見極めることにつながります。
今週のおすすめ本
レターの本文で 「トンカツ理論」 を取り上げました。トンカツを自宅で食べたい時に、自分で作らずスーパーで買う理由を整理すると、企業が外注 (アウトソース) する理由に当てはまるというものでした。
この理論を知ったのは佐藤義典さんという方がおっしゃっていたからで、今週のおすすめの一冊は佐藤さんが書いた本 実戦マーケティング戦略です。
この本はマーケティングの理論やフレームワークを、とてもわかりやすく説明してくれます。タイトルに 「実戦」 とあるように、読んだその日から使えるマーケティングノウハウが惜しみなく書かれています。
よかったらぜひ読んでみてください!
レター作成者
多田 翼
Aqxis 合同会社 代表 (会社概要はこちら)
主な事業
マーケティング, マーケティングリサーチ, 事業戦略などのコンサルティング事業
※ お問い合わせは会社 HP からご連絡ください
経歴
Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立。Aqxis 合同会社を設立し代表に就任。Google 以前はインテージにてマーケティングリサーチ業務に従事。
京都大学大学院 工学研究科 修了。
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