#13 昔話は学びの宝庫!一寸法師, わらしべ長者, 桃太郎 …
こんにちは。メールを開いていただきありがとうございます。
前々回の第11回のレターで、ゲームからビジネスやキャリアに学べることをお届けしました。
今回は昔話を取り上げます。レターからヒントになればと思うのは、
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一寸法師に学ぶ 「強みの磨き方」
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わらしべ長者と 「価値のつくり方」
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桃太郎と 「リーダーシップ」
ぜひ最後まで楽しみながら読んでみてください!
一寸法師の活躍
1つ目は 「一寸法師」 です。一寸法師に学ぶ 「強みのつくり方」 を見ていきましょう。
一寸法師の特徴は身体の小ささです。一寸はどのくらいの長さかイメージがつきますか?
一寸は 3cm ほどです。一寸法師の身体は大人の小指よりも短いサイズなのです。普通に考えれば、小さすぎて戦力にはなりません。戦いにおいては一寸という身体自体が弱みです。
事実、物語では一寸法師は襲ってきた鬼に簡単に食べられてしまいます。ところが一寸法師は鬼に食べられても体内で生き残り、武器である針を使い鬼の身体の中を攻撃し、鬼をやっつけます。お姫様を鬼から守ったのです。
まともに正面から戦った時には、一寸法師は鬼に全く太刀打ちできませんでした。しかし、体内で鬼を攻撃するという勝ち筋を明確にし、一寸という特徴を強みに変えて鬼を倒したのです。
特徴と強み
一寸法師から学べることは、「特徴と強み (と弱み) を分けて考えてみよう」 です。
特徴とは、自分の客観的事実です。この時点では、強みでも弱みでもありません。
それに対して、強みと弱みは、特徴への解釈です。強みや弱みは、ある文脈において何かと比べてのものです。強みとは比較優位、弱みは比較劣位です。あくまで相対的なものです。
どんな環境で、誰が、何と比べるかによって、強みにも弱みにもなります。
自分の強みの磨き方
特徴から、強みと弱みを考えるにあたって、どうすれば自分の強みを見い出し、強みを伸ばしていけるでしょうか?
強みを磨くために、以下の3つのステップで考えてみるとよいです。
強みを磨く3つのステップ
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まずは自分の特徴を理解する (この段階では強み・弱みと捉えない)
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どういう環境で強みになるか、どうなってしまうと弱みになるかを見極める
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見い出した強みを、さらに伸ばすにはどうすればいいかを考える
例えば次のように、特徴把握から強みを見出し、行動することによって磨いていきます。
仕事で強みを磨く方法例
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自分の特徴はものごとを客観的に捉えられる冷静な目
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問題発生時や緊急事態で皆が平常時ではない時に、原因究明やリカバリー、再発防止策を考え、まわりにわかりやすく提示できる
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(いつも同じことを繰り返す) ルーティン的な仕事よりも、新規プロジェクトなどの新しい挑戦の機会を見つけ積極的に参加する
わらしべ長者のサクセスストーリー
では2つ目の昔話です。「わらしべ長者」 です。
わらしべ長者は、どんな話だったか覚えていますか?
下のリンクはわらしべ長者のアニメ動画 (YouTube) です。
まんが日本ばなしのサイトには次のようにあらすじが書かれています。
何をやっても上手くいかない貧しい男が、運を授けて欲しいと観音さまに願掛けをする。すると観音さまが現れ、お堂を出た時に初めて手にした物を大切にして西へ行くようにと言われる。
男はお堂を出たとたん転んで一本の藁を手にする。それを持って西へ歩いていくとアブが飛んできたので、藁でしばって歩き続けた。泣きじゃくる赤ん坊がいたので、藁につけたアブをあげた。すると母親がお礼にと蜜柑をくれた。
木の下で休んで蜜柑を食べようとすると、お金持ちのお嬢様が水を欲しがって苦しんでいた。そこで蜜柑を渡すと、代わりに上等な絹の反物をくれた。男は上機嫌に歩いていると倒れた馬と荷物を取り替えようと言われ、死にかけの馬を強引に引き取らされてしまった。やさしい男は懸命に馬を介抱し、その甲斐あって馬は元気になった。
馬を連れて城下町まで行くと、馬を気に入った長者が千両で買うと言う。余りの金額に驚いて失神した男を、長者の娘が介抱するが、それは以前蜜柑をあげた娘だった。長者は男に娘を嫁に貰ってくれと言い、男は藁一本から近在近郷に知らぬ者のない大長者になった。
ストーリーをまとめると、わらしべ長者では次のように男が持っていたものが変わっていきました。
引用: ★☆華夏ちゃんマンガ日記☆★
文章で補足すると、以下のようになります。
わらしべ長者のストーリー展開
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最初に手にした 「藁 (わら) 」 を持って西に向かう
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アブをくくりつけた藁を子どもをあやしたい母親に上げ、密柑をもらう
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水を求めて苦しんでいた女の人に密柑を渡す。お礼に上等の絹の反物をもらう
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反物と馬を交換する
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馬を千両で譲ってほしいと言われ男は気を失う。介抱してくれたのは密柑を上げた女の人だった
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その女性と結婚し男は大長者になった
わらしべ長者から学べること
では、わらしべ長者はビジネスへどんな示唆があるでしょうか?
わらしべ長者からの学びは 「価値は相手が決める」 です。
最初は藁を手にしますが、主人公の男にとっての藁の価値は、たかってくるアブをくくりつける程度の物でしかありませんでした。しかし、これを必要とした人がいたんですよね。泣きじゃくる子どもを何とかしたいと思う母親です。
同じものでも人によって価値かどうかは変わるわけです。
マーケティングでも同じで、提供者側 (売り手) がどれだけ自分たちの商品やサービスが良いと思っていても、お客さんが価値だと思わなければ買ってもらったり使い続けてもらえません。
顧客視点で捉える重要性です。
価値の本質
価値について、さらに掘り下げてみましょう。
価値の本質は相対的であることです。
相対的とは、「誰が」 「どんな状況で」 「何と比べるか」 によって、同じものでも価値がある時もあれば、そうではない時もあるのです。
わらしべ長者に当てはめれは、もし子どもの機嫌が良ければアブがついた藁は母親にとって価値はありませんでした。お金持ちの女性は、喉が渇いて苦しんでいなければ密柑は欲しがらなかったでしょう。
困っている状況で、かつその問題を解決できる代替手段が他にはなかったからこそ、主人公がその時に持っていたものが価値になったのです。
桃太郎の決意
3つ目の最後にご紹介するのは桃太郎です。
昔話の桃太郎をリーダーシップの観点から紐解いてみましょう。
桃太郎のリーダーシップ形成
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桃太郎は鬼を退治して平和な世の中にしたいと決断した
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おじいさんとおばあさんへ決意を伝える
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犬・猿・キジを仲間にして鬼をやっつけた
桃太郎のリーダーシップの始まりは、村を平和にしたいという決意からです。この時点ではフォロワーはいませんが、内側の気持ちとして桃太郎の中にリーダーシップが生まれたのです。
リーダーは旗を立てよう
私がリーダーに求められる力を1つ選ぶとすると、構想力です。ビジョンを描く力です。
Why という旗を立てられるかです。人から言われたのではなく、自分の内側からできあがってきた信念です。桃太郎が自らの志として 「平和な社会にしたい」 と思ったようにです。
旗を立ててまわりに示し、共感され仲間が集まってきます。この瞬間がリーダーにフォロワーがつく時です。
Why から始めるゴールデンサークル
ここまでの話に関連してぜひ紹介したいのが、Why から始めるゴールデンサークルです。
引用: PngJoy
ゴールデンサークルは3つの円でできています。中心から順番に Why 、How 、What の3つの円で、Why は目的、How はプロセス、What は結果です。
ではゴールデンサークルをうまく使った例をご紹介します。Apple です。
Why から始めた Apple
普通の企業はゴールデンサークルの外側から内側に向けて考えます。What → How → Why の順番です。
しかし優れた企業やリーダーは逆です。Why → How → What の順で考え人々に伝えるのです。例えば Apple がそうです。
もし Apple が iPhone や Mac を外側の what から伝えると、次のような流れになります。
もし What からだと…
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我々のコンピュータは素晴らしく、美しいデザインで簡単に使え、親しみやすい商品です (Apple が提供する what)
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ひとつ買いませんか?
Apple は Why から始めています。Why からストーリーを語りゴールデンサークルの内側から 「Why → How → What」 の順番になると、Apple は次のようになります。
Why から始めた Apple
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Why: 我々は 「世界を変える」 という信念を持っています。Apple は違う考え方 (Think Different) に価値があると信じています
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How: 私たちが世界を変える手段は、美しくデザインされ簡単に使え、親しみやすい製品です
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What: こうして素晴らしいスマートフォン iPhone ができあがりました
Apple は始めに Why であるビジョンを伝えています。人々はここに共感するからこそ、iPhone を手に取るんですよね。
仕事も Why から始めてみよう
Why から始めるゴールデンサークルの考え方は、仕事でも活用できます。例えば、上司から仕事を頼まれた場合を想定してみましょう。
よくあるのは上司からは What だけを言われるのではないでしょうか。「これをやってほしい」 という指示です。
もちろん What だけの依頼内容から仕事を進められますが、一歩立ち止まり Why に立ち返ってみるといいです。
Why である 「なぜやるのか」 を考えると、依頼内容の背景や目的、その仕事はどんな価値があるのか、仕事の前後関係の全体像を把握できます。何より Why が見えてくるとモチベーションに影響するんですよね。
また、What のための How (その仕事をどう進めるか) も同時に考えるのも有効です。実際に手を動かす前に How を意識すれば、どんな情報やデータが必要で、同僚や他部署に早めに依頼しないといけないなど、具体的にやるべきことを洗い出すことができますよ。
TED のプレゼン動画
Why から始めるに関連して、ゴールデンサークルで有名な TED 動画をご紹介しますね。
サイモン・シネックの 「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」 です。私が今まで見た TED で間違いなくベスト5に入るので、よかったら見てみてください。
今日のアクション
そろそろ今回のレターも終わりです。ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回は3つの昔話から、ビジネスやキャリアに学べることを掘り下げました。
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特徴と強みを分けて強みを磨く方法 (一寸法師)
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価値は相手が決める。価値は相対的 (わらしべ長者)
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Why から始めるリーダーシップと仕事の進め方 (桃太郎)
ここからの読者のあなたにとってのアクションは、どのようなものがあるでしょうか?
例えば、
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自分にとっての 「一寸」 とは何か。それはどんな環境で強みに変えられるか?
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あなたが持っている藁は?誰に届ければ価値になる?
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今日の ToDo リストは What だけになっていないですか?Why に立ち戻ってみると?
今回のレターから、何か1つでも気づきやアクションへのきっかけになっていればうれしいです。
いただいた質問への回答
質問箱への回答コーナーです。
今回は4つです。
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小学生にマーケティングや戦略などのビジネスを教えるならどんな授業をする?
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Google 入社後で見える景色はどう変わった?
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多田さんにとっての Why は?
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AI 時代で人の能力の差別化とは?教育はどう変わる?
[質問 1] 小学生にマーケティングや戦略をどう教える?
一言で答えるなら、子どもの身近なことでマーケティングや戦略の説明と、体験ワークショップをします。
回答では、
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シンデレラに当てはめたマーケティング
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鬼滅の刃に見る戦略思考
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マーケティングの体験型ワークショップ
について書いています (詳細はこちら) 。
[質問 2] Google 入社後で見える景色はどう変わった?
Google に入って見えた景色の変化を、以下の3つで回答しました。
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マーケティングの景色
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ビジネスの景色
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キャリアの景色
詳細はこちらです。
[質問 3] 多田さんにとっての Why は?
Why を 「目指したい自分の理想像」 と捉えて回答をしました。
Why は 「かっこよく生きる」 です。そのためのミッションに当たること、行動指針を3つご紹介しています (こちら) 。
[質問 4] AI 時代で人の能力の差別化とは?教育はどう変わる?
機械と比べた時に、人ならではの特徴は、
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大局観
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直観
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センス (直観的な判断力)
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発想力 (点と点をつなげる)
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夢を見る、ビジョンを描く
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遊び心
これからの教育に求められる役割は、
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◯×ではなく、正解のないこと (唯一の正解ではなく相対的な最適解)
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減点方式よりも得意を伸ばす。挑戦と失敗の奨励
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記憶 (詰め込み) だけではなく、自由な発想や組み合わせ
回答の詳細はこちらです。
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レター作成者
多田 翼
Aqxis 合同会社 代表 (会社概要はこちら)
経歴
Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立。Aqxis 合同会社を設立し代表に就任。Google 以前はインテージにてマーケティングリサーチ業務に従事。
京都大学大学院 工学研究科 修了。
主な事業
マーケティング, マーケティングリサーチ, 事業戦略などのコンサルティング事業
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