
#19 昭和と平成の名作 CM に学ぶ、伝わるコミュニケーション方法
こんにちは。メールを開いていただきありがとうございます。 |
今回のテーマはマーケティングで、広告に焦点を当てています。 |
書いている内容は、 |
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ぜひ最後まで楽しみながら読んでみてください! |
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たくさんの広告 |
いきなりの質問ですが、昨日の1日でどれくらいの広告を見たでしょうか? |
見た広告の個数、広告内容は覚えてますか? |
私たちは広告だと気づいているもの、気づかなかった広告も合わせると日々多くの広告を目にしています。スマホ、パソコン、テレビ、新聞や雑誌、電車の中や屋外広告です。 |
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マーケティング力を鍛える広告の見方 |
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今回の前半でご紹介したいのは、広告をマーケティングへのトレーニングとして活用する方法です。マーケティングのものの見方や考え方を鍛えるために、普段から目にする広告を次の3つの着眼点から見ていくといいです。 |
マーケティング力を鍛える広告の見方 |
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[視点 1] ターゲット顧客 |
まず見ると良いのは、誰に向けての広告なのかです。広告を見たら、商品・サービスのターゲット顧客は具体的にどういう人かを読み取ってみます。 |
特にトレーニングになるのは、ターゲットが自分ではないケースです。広告を見て、具体的な商品やサービスの利用シーンから顧客像をイメージしてみます。 |
ターゲット顧客のイメージ例 |
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[視点 2] 提供価値 |
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提供価値とは、ターゲット顧客が商品をサービスを使うことによって得られる便益です。機能的な価値もあれば、うれしいなどの気持ちの感情的価値もあります。 |
考える時のポイントは、自分にとってではなく 「ターゲット顧客にとっての提供価値」 です。他者の視点や立場になろうとすることが、マーケティング力を鍛えるトレーニングになります。 |
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[視点 3] メッセージ |
3つ目の広告を見る視点はメッセージです。提供価値がわかりやすいメッセージになっているかです。 |
メッセージを分解すると、言葉、写真やイラスト、映像と音です。 |
ターゲット顧客が広告をパッと見た時に、提供価値が直感的に伝わるかどうかがポイントです。広告を見て意図的に考えさせる広告設計もありますが、基本的に人は広告の良し悪しは一瞬で判断すると思っていたほうがいいです。 |
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ここまで、マーケティング力を鍛える広告の見方をご紹介しました。 |
マーケティング力を鍛える広告の見方 |
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湖池屋 スコーンのテレビ CM |
1987年 (昭和62年) と昔のテレビ CM ですが、スナック菓子の湖池屋の 「スコーン」 です。 |
まずは15秒のテレビ CM をご覧ください。広告を見る時の3つ視点である 「ターゲット顧客」 「提供価値」 「メッセージ」 をぜひ意識しながら見てみてください。 |
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いかがでしたか? |
「スコーンスコーン、湖池屋スコーン、カリッとサクッと美味しいスコーン」 と、軽快な歌に合わせて社交ダンスを踊る CM でした。昭和の名作です。 |
ではスコーンの CM を、ターゲット顧客、提供価値、メッセージ3つの順番で掘り下げていきましょう。 |
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[視点 1] ターゲット顧客 |
スナック菓子なのでターゲットは子どもです。この CM をおもしろがるのは、幼稚園から小学生です。 |
毎日のおやつの時間にお菓子を食べる子どもは、家で友だちと、または兄弟・姉妹でお菓子の時間を楽しみにしています。好きなお菓子を食べて幸せな気持ちになり、満足感を得たいと思っています。 |
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[視点 2] 提供価値 |
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ポテトチップスにはない独自の食感と食べ応えです。「カリッと」 と 「サクッと」 が両方ある食感、それでいておいしいお菓子がスコーンの魅力です。 |
おやつの時間にスコーンを食べることによって、幸せや満ち足りた気持ちになれます。友だちと一緒に食べれば、その時間を充実させることができます。これらがスコーンの顧客への提供価値です。 |
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[視点 3] メッセージ |
スコーンのテレビ CM のメッセージは、シンプルかつ必要な要素が入っています。 |
社交ダンスの講師が 「スコーン スコーン 湖池屋スコーン」 を連呼して、商品名と会社名を伝えています。次に 「カリッとサクッとおいしいスコーン」 と、スコーンの独自性をわかりやすく言っていますよね。 |
この CM が秀逸なのは、音と動きの全てが絶妙にマッチしていることです。講師の手拍子、掛け声、社交ダンスの動きが、「スコーン スコーン 湖池屋スコーン」 「カリッとサクッとおいしいスコーン」 にハマって、広告を見る人には強く印象に残ります。 |
これを見た子どもたちは、自然とこのフレーズを歌いたくなります。 |
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ではここからは、広告を見る3つの視点のうち 「メッセージ」 に焦点を当ててさらに見ていきましょう。 |
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優れた広告コピーとは |
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本のタイトルは、広告コピーってこう書くんだ!読本 (谷山雅計) です。 |
この本で印象的だったことの1つは、「優れた広告コピーは "常識" と "芸術" の間にある」 です。 |
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常識と芸術の間 |
ここで言う常識とは 「聞いても当たり前」 と思うこと、芸術とは 「聞いてもわからないこと」 です。 |
優れた広告コピーとは見たり聞いたりした時に、「それは当たり前」 でもなく、「何を言っているのかわからない」 でもなく、ちょうどその中間にあるというわけです。広告コピーを見た時に、「そういえばそうだね」 と思えるものです。 |
まとめると、 |
常識と芸術の間 |
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ではここまでの話を、具体例に当てはめて見ていきましょう。 |
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「そうだ 京都、行こう」 |
例として取り上げたいのは 「そうだ 京都、行こう」 です。 |
以下の動画は1993年のテレビ広告です。 |
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このキャンペーンは1993年 (平成5年) の秋から展開されています。 |
「そうだ 京都、行こう」 というメッセージは、常識と芸術の間にあります。 |
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常識すぎず、芸術でもない |
京都へ行くことは多くの人にとっては当たり前のことではありません。 |
一部の人、例えば京都に住んでいる方や実家が京都の人以外は、京都へ行くことは非日常的です。つまり大多数の人にとっては京都に行くことは 「常識」 ではないのです。 |
一方で 「京都へ行こう」 と言われて、その意味が全くわからないことはないでしょう。京都は多くの人にとって一度は行ったことがある、行ったことがなくても日本人の誰もが知っています。 |
「そうだ 京都、行こう」 と見たり聞いて、「そういえば前に京都に行ったのはいつだったかな?」 「確かに京都に行ってみたいかも」 と思わせる何かがあります。 |
「何か」 を掘り下げると、個人的に思う 「そうだ 京都、行こう」 のコピーのポイントは、はじめに 「そうだ」 と一言が入っていることです。自分の心を代弁してくれ、次に続く 「京都、行こう」 が自分ごとになるんですよね。 |
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コミュニケーションへの応用 |
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常識と芸術の間を別の捉え方をすれば、既に知っている既存情報の中にどれだけ新しい新規情報を入れるかです。 |
コミュニケーションで相手に伝える中に既知情報ばかりだと、相手には当たり前です。これは 「常識」 です。 |
しかし新規情報 (知らなかったこと) が多すぎると、受け手は頭の中で情報処理が追いつけません。伝え方が抽象的すぎる内容や説明が足りていないと関心や興味が生まれず、理解されません。これでは 「芸術」 になってしまっていますよね。 |
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伝わるコミュニケーションとは |
ビジネスでのコミュニケーションで意識したいのは、伝える内容の抽象レベル (具体レベル) を相手に合わせることです。 |
相手と背景や前提知識がそろっていれば、抽象的な言い方でも意思疎通ができます。しかし、相手との情報ギャップがあれば、例えば自分は詳しいが相手は背景情報が少なければ、相手に配慮して丁寧なコミュニケーションが必要です。 |
コミュニケーションで大事なのは、伝える内容の抽象と具体を相手に合わせることです。 |
では、具体的なビジネスシーンで当てはめてみましょう。 |
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上司と部下の会話例 |
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上司: 「あれどうなった?」 |
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2人の間ではこれだけでコミュニケーションは成立しています。しかし第三者には、つまり背景情報を持っていない人にとっては何の話かわからないですよね。 |
では、この会話を具体的な言い方にすると、次のようになります。 |
上司: 「新規顧客へのマーケティング施策を開始して、消費者の反応はどう?」 |
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抽象レベルを相手に合わせよう |
2つの会話の例は、やや極端にしてみました。 |
どちらかで唯一の正解はなく、大事なのは伝える側が抽象レベルを相手に合わせることです。 |
あなたがもし上司の立場だったとします。部下との情報共有が既にできている場合は、前者の 「あれどうなった?」 で会話は成立します。しかし部下との情報ギャップが大きければ、後者の 「新規顧客へのマーケティング施策を開始して消費者の反応はどう?」 と丁寧に訊く必要があります。 |
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具体的すぎることの弊害 |
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しかし、いちいちそこまで言わなくても相手に 「あれ」 や 「例の件」 で伝わるのであれば、コミュニケーションは楽にできます。むしろ 「あれ」 で済む相手に、わざわざ具体まで詳しく伝えすぎるとコミュニケーションはくどくなり逆効果です。 |
では、抽象レベルを適切にするためにはどうすればいいでしょうか? |
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適切な抽象レベル |
相手に伝える内容が抽象的すぎると、いわばアートのような情報になってしまいます。一方で具体的すぎれば相手には当たり前になり、ともすると関心を持って聞いてもらえなくなります。 |
コミュニケーションの落とし所は、相手にとって抽象的 (芸術) すぎず、かつ当たり前 (常識) すぎないことです。芸術と当たり前の中間に最適解があります。 |
ここで重要なのは、具体的かの答えを決めるのは相手です。 |
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抽象具体ピラミッド |
伝わるコミュニケーションのために持っておくと良いのが、「抽象具体ピラミッド」 です。 |
次のようなイメージです。 |
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抽象具体ピラミッドを頭の中にイメージしておき、相手に合わせてどこまでの情報を伝えるかを見極めます。先ほどの上司と部下の例で言えば、背景情報が十分に共有できていればピラミッドの頂上だけで済みます。「あれ、どうなった?」 です。 |
一方の前提を詳しく言うのであれば、ピラミッドの二段目や三段目までの情報も伝えるようにします。 |
繰り返しになりますが、適切な抽象レベルを決めるのはコミュニケーション相手です。相手に合わせて抽象と具体をコントロールしていくと良いです。 |
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今日のアクション |
そろそろ今回のレターも終わりです。ここまで読んでいただきありがとうございます。 |
このレターの毎回に共通するコンセプトは 「Question Insights Action」 です。意味は、問いかけに対して示唆を得て (Insights) 、半歩でもいいので行動につなげてみませんか (Action) 、というものです。 |
今回は、広告を見る時の3つの視点、その中からメッセージについて昭和と平成の名作 CM を例にご紹介しました。ここからビジネスにつなげて、相手に伝わるコミュニケーションを掘り下げました。 |
このレターからの問いかけは、 |
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いただいた質問への回答 |
質問箱への回答コーナーです。 |
いただいた質問は2つです。 |
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[質問 ] 営業でお客さんと直接会う意味とは? |
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直接会うことが貴重な機会や時間になり、その分だけ会うことの価値がより問われます。Web で済むかもしれないのに、あえて会うことの価値をお互いに得られるかです。 |
回答では、体験価値について、また、営業で 「これまでのやり方を変える」 についてを掘り下げました (詳細はこちらです) 。 |
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[質問 2] 新社会人として活躍しスキルを磨くためには? |
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仕事で大切にしたい考え方があり、 「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」 です。孫子の兵法からで、この言葉には仕事で大事な事が含まれているんです。 |
回答の詳細はこちらです。 |
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質問・リクエストを募集しています |
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レター作成者 |
多田 翼 |
経歴 |
主な事業 |
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