#25 マーケターの役割を解説。Google と孫子の兵法からマーケティングで大切なこと
こんにちは。メールを開いていただきありがとうございます。
今回のテーマはマーケティングです。
レターを読んでわかることは、
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マーケティングの2つのアプローチ (プロダクトアウトとマーケットイン)
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マーケットインが機能しない時
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Google のマーケティングの考え方
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孫子の兵法とマーケティング
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「マーケターとは恋のキューピット」 が意味すること
全体を通して 「マーケターの役割」 がわかる内容になっています。
マーケティングのお仕事をされていたり、少しでも興味のある方には参考になると思います。わかりやすく書いたので、ぜひ最後まで楽しみながら読んでみてください。
プロダクトアウトとマーケットイン

マーケティングには、プロダクトアウトとマーケットインという考え方があります。
それぞれを簡単にご説明すると、次のようになります。
プロダクトアウト
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自分たちがつくりたい・つくれるものを基準に商品開発をする
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つくったものを売る
マーケットイン
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顧客の声やニーズから商品開発をする
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売れそうなものをつくる
単純に見比べると、顧客が欲しいものを基点につくっていくマーケットインのほうが良いように見えるかもしれません。
果たして本当にそうなのでしょうか?
マーケットインが機能しない時
確かに、マーケットインのやり方は顧客のニーズを汲み取って商品をつくるので、理に適っているように見えます。
しかし、マーケットインが常にうまくいくとは限りません。
顧客が自分のニーズを明確にわかっていない場合です。これまでの過去の延長ではなく、全く新しい商品・サービス、それによる今までになかったユーザー体験が提供されるケースです。
こういう状況では顧客に聞いても本当に知りたいニーズは出てこないんです。
例を1つご紹介しますね。
携帯電話への価値観の変化

携帯電話とスマートフォンの例です。
携帯電話が今で言うガラケーが主流だった時に、携帯電話へのニーズや要望を顧客の声だけをそのまま取り入れていたとしたら、今のようなスマホへの進化はなかったでしょう。
こんなツイートを見かけました。
動画の中での当時の街頭インタビューでは、次のような声 (不満やニーズ) がありました。
見せられたスマホ (タッチパネル型の全く新しい携帯電話) への感想
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携帯電話はボタンがあるほうが使いやすい
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画面に指紋がつく。タッチパネルは絶対いらない
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iPod があるのでスマホは不要
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スマホにはワンセグがない
ものごとへの価値観は、時代とともに変わっていきます。
プロダクトアウトと 「未来の当たり前」

プロダクトアウトとマーケットインに話を戻すと、過去の延長上にはないユーザー体験を提供するには、プロダクトアウトが適しています。
プロダクトアウトとは、自分たちがつくりたい・つくれるものを基準に商品開発をするアプローチでした。
消費者や顧客には見えていなくても、プロダクトアウトからはつくり手の側には見えている 「未来の当たり前」 を先回りして提示できます。
先ほどの携帯電話に当てはめると、人々が携帯電話で映像コンテンツを見るために 「ワンセグで見たい」 というニーズに応えるのではありません。YouTube や TikTok の動画を電車内でも当たり前のように見ている世界です。
さらに未来になると、スマホのような端末を手に持って見るのではなく、グラス型のウェアラブル端末で見るようになるユーザー体験になるでしょう。5G 回線が普及すれば通信量制限がなくなるはずで (いわゆる 「ギガが足りない」 が起こらない) 、今よりももっと動画や音声コンテンツが当たり前になります。
プロダクトアウトとマーケットインの両立
プロダクトアウトで誤解しないようにしたいのは、ユーザーのニーズを全く無視していいわけではありません。
最初はプロダクトアウトという自分たち基点からだとしても、どこかでマーケットインの発想が必要になります。プロダクトとマーケット (生活者や顧客) をつなげることです。
目指したいのはプロダクトアウトとマーケットインの両立です。
では次に、私が以前に働いていた Google のマーケティングの考え方をご紹介させてください。
Google のマーケティング

Google のマーケティングの考え方に、「Knowing the user, knowing the magic, and connecting the two.」 というものがあります。日本語に訳すと、「ユーザーを知り、魔法を知って、2つをつなげるものである」 です。
この言葉が何を意味するのかを、順番にご説明しますね。
Knowing the user
まずは生活者や顧客の理解からです。
顕在化しているニーズ、時には本人自身も認識していない奥にある無意識の本音まででの理解です。理解から、彼ら彼女らに対して自分たちがどんな貢献ができるかを見極めます。
これが 「Knowing the user」 です。
Knowing the magic
次に 「Knowing the magic」 です。ここで言う 「Magic」 とは何でしょうか?
自分たちの商品やサービスのことで、商品・サービスが顧客にもたらす価値を 「魔法」 と表現しているんです (この考え方を当時知った時におもしろい表現だなと思ったのを覚えています) 。
単に商品やサービスのことを知るだけではないんですよね。商品やサービスをつくる人たちの想いまで理解します。存在意義、なぜその商品やサービスがつくられたかの哲学やストーリーまでを知るのが 「Knowing the magic」 です。
Connecting the two
そして 「Connecting the two」 です。2つをつなげるとは、「生活者」 と 「商品・サービス」 を結びつけることです。
顧客を知り、提供する商品・サービスの特性や作り手の想いまで深く理解しているからこそ、マーケターは両者をつなげることができます。
では最後にもう少し着想を広げて、孫子の兵法をマーケティングに当てはめてみます。
孫子の兵法から

有名な言葉、「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」 です
この言葉には、ここまで見てきた内容につながるマーケティングの本質を見ることができます。
では、「彼を知る」 と 「己を知る」 に分けて、順番に見ていきましょう。
彼を知る
「彼を知る」 をマーケティングに当てはめれば、顧客理解の重要性です。
これは私のマーケティングの一言の定義で、マーケティングとは 「顧客から選ばれる理由をつくる活動前」 です。選ばれるとは、買ってくれる、使ってもらえる、来店してくれることです。
自分たちはなぜ選ばれるかを見出すために、顧客理解が大事です。顧客のことを、時には顧客以上に深く理解することがマーケターには求められます。
Google の 「Knowing the user, knowing the magic, and connecting the two.」 に当てはめれば、「彼を知る」 とは 「Knowing the user」 です。そしてもう1つについて先に言うと、「己を知る」 とは 「Knowing the magic」 です。
己を知る
マーケティングで顧客理解と共に深めたいのが、自分たちの理解です。
具体的には顧客に提供する商品やサービスです。
己 (商品) を知る
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商品・サービスの機能やスペック
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どう使えるか (利用シーン)
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使うことにより得られるベネフィット
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開発された背景やストーリー
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つくり手の想い
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顧客に提供できる価値
マーケティングの文脈での 「己を知る」 は、このような分解ができます。
特に最後の 「顧客への提供価値」 まで理解できているかです。一言で言ってしまうと、顧客への本質的な提供価値を理解する重要性です。
マーケターの役割

ここまで見てきた組み合わせを整理すると、
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マーケットインとプロダクトアウト
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Knowing the user と Knowing the magic
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「彼を知る」 と 「己を知る」
共通点があり、顧客と商品・サービスがセットになっています。
以上から、私が思うマーケターの役割があります。マーケターとは、顧客と商品・サービスを結びつける 「恋のキューピット」 です。少し固い言葉を使えば、両家の縁談を取り仕切る 「仲人」 です。
今日のアクション
そろそろ今回のレターも終わりです。ここまで読んでいただきありがとうございます。
このレターの毎回に共通するコンセプトは 「Question Insights Action」 です。意味は、問いかけに対して示唆を得て (Insights) 、半歩でもいいので行動につなげてみませんか (Action) 、というものです。
今回はマーケティングを見てきましたが、問いを次のようにつなげたいと思います。
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あなたからの 「Magic (魔法) 」 は何ですか?
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その魔法は誰にとって、どんな価値になりますか?
自分にとっては当たり前のこと、大したことだと思わないことでも、まわりの他人から見れば実はすごいことはあります。そこに自分では気づいていなかった、あなたならではの魔法があるはずです。
ぜひ魔法の発見と、相手を知ることからの価値提供につなげていきませんか?
今週の YouTube
今回はマーケターとはという内容だったので、関連動画のご紹介です。
マーケターの役割を 「7つの習慣」 に当てはめて解説しています。
成功するマーケターを 「7つの習慣」 で解説
いただいた質問への回答
質問箱への回答コーナーです。
今回は2つです。
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マーケティングが不要な時とは?
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バズるニュースの条件は?
[質問 1] マーケティングが不要な時とは?

今回のレターにも関連するマーケティングについての質問をいただきました。マーケティングが不要なケースとして、次の4つで回答しました。
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新規顧客の獲得
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広告と販促活動
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過度な安売り
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新規販売チャネルの開拓
詳細はこちらです。
[質問 2] バズるニュースの条件は?

バズるニュースに共通することは、以下のような条件ではと思います。
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新規性: 新しい何かがある
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意外性: 驚きがある
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共感性: 多くの人の共感が得られる
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社会性: 社会的なインパクトがある
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人間性: ニュースの中に人のストーリーがある (例: 心温まる人情ストーリー)
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季節性: その季節特有のイベント関連
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地域性: ローカル性があったり、その国や地域、またはネット民 (例: Twitter 民) にしかわからないコンテクストがあり盛り上がる話題
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レターへのリクエスト
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レター作成者
多田 翼
Aqxis 合同会社 代表 (会社概要はこちら)
経歴
Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立。Aqxis 合同会社を設立し代表に就任。Google 以前はインテージにてマーケティングリサーチ業務に従事。京都大学大学院 工学研究科 修了。
主な事業
マーケティング, マーケティングリサーチ, 事業戦略などのコンサルティング事業
※ お問い合わせは会社 HP からご連絡ください
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