#27 たまごっちとポテチのロングセラー理由を解説。変えないこと、変えること

世の中には一握りのロングセラー商品があります。長きにわたって人気が続く秘訣を、たまごっちとポテトチップスを例にご紹介します。
多田 翼 2021.05.27
誰でも

こんにちは。メールを開いていただきありがとうございます。

今回のテーマは 「変えないこと」 と 「変えること」 です。

レターを読んでいただくとわかることは、

  • 今も忘れられない社長の言葉 (人生訓としても) 

  •  「たまごっち」 の商品開発

  • ポテトチップスのロングセラーの理由

  • 自分を変える方法


ぜひ最後まで楽しみながら読んでみてください。

社長の言葉

今回のテーマは 「変えないこと」 と 「変えること」 なのですが、たまごっちとポテチの話にはいる前に、今も大切にしている言葉を紹介させてください。私が新卒で入った会社はマーケティングリサーチの会社で、インテージでした。

入社した当時の社長の言葉で、今も印象に残っているものがあります。

 「変えないことを知っているから、全てを変えることができる」 


私の解釈は、まず変えないことを見極めて、残った他の全ては変えることができるという意味です。変化することの重要性と、同時に意思を持って 「変えないこと」 を持っておく大事さです。

***

この言葉から、商品開発やマーケティングに着想を広げてみます。

たまごっちへの当てはめ

ご紹介したいのは、たまごっちのインタビュー記事です。



まずはたまごっちの歴史を振り返ってみましょう。

初代のたまごっちは1996年の発売でした。

初代たまごっち (1996年発売)|引用: <a href="https://marketingnative.jp/tamagotch/">Marketing Native</a>

初代たまごっち (1996年発売)|引用: Marketing Native

初代たまごっちから20年以上にわたるロングセラー商品です。

引用: <a href="https://marketingnative.jp/tamagotch/">Marketing Native</a>

引用: Marketing Native


 「変えたこと」 と 「変えていないこと」 

たまごっちには 「変えたこと」 と 「変えていないこと」 がありました。具体的には、

変えたこと

  • ターゲットユーザーを女子高生から女子小学生に変更

  • 画面のカラー化

  • 赤外線通信

  • アプリ連携


たまごっちはターゲットユーザーを大胆に変えました。

初代の頃は女子高生をメインユーザーにしていましたが、その後に小学生女子に変えています。機能も技術進化やユーザーニーズに併せて追加しています。

一方で変えていないこともあります。

変えなかったこと

  • 見た目のデザイン (卵型, 四角の画面, ボタンは3つ) 

  • オン・オフ機能

  • たまごっちは 「生き物を育てる」

  • 命として商品をつくっていく


変えていないことで興味深いと思ったのは、たまごっちのコンセプトである 「生き物を育てる」 です。

変えなかった世界観

たまごっちの世界観はブレずに変わっていません。「生き物を育てる」 というコンセプトは一貫しているんです。

コンセプトが定まっているからこそ、やろうと思えば技術的にはできることもコンセプトに合わなければ実装しないという判断ができます。象徴的なのはオン・オフ機能がないことです。

通常の携帯型ゲームには電源スイッチがついています。遊ぶ時だけスイッチからオンにし、終わればオフにします。

しかし、たまごっちは生き物という位置づけなので、オンやオフの機能はコンセプトに合いません。守り続けている 「生き物を育てる」 「たまごっちは命である」 という世界観が、他のおもちゃにはない独自性をつくり出す源泉になっているのです。

***

では次に他のロングセラー商品から、今度は 「変えること」 にスポットライトを当てて見てみましょう。

カルビー 「ポテトチップス」 の歴史

皆さんは、カルビーのポテトチップスはいつ頃に生まれたかご存知でしょうか?

ポテチの発売が開始されたのは1975年です。

うすしお味は1975年の発売以来、14回もの変更を実施しています (2019年までで) 。


たゆまぬ試行錯誤

日経ビジネスの記事によれば、「定番品はもともと変えられるポイントが少ないが、うすしおはとりわけ変更できることが限られる。そのなかでおいしくつくるために、繊細な取り組みをしている」 とのことです。

具体的には、次のように説明されています。

味の要になる塩は、伯方の塩や沖縄・石垣島産、瀬戸内海産など、時代ごとに消費者の支持が集まるものを使ってきた。2019年6月のリニューアルでは健康志向の流れに沿うかたちで、うすしお味の塩分量を 5% 削減した。

試作品は200パターンに及び、十数人で実際に食べながらレシピを決めた。
引用: 定番は進化し続ける - カルビー、うすしお味は14回変更|日経ビジネス

うすしお味の塩分量を 5% の削減は、消費者にとっては言われても変化を感じないレベルです。パッケージの変化も写真で並べて見ればわかりますが、店頭で選ぶ時には気づかないでしょう。

メーカーの商品開発は、普段の消費者がお店で選んだり食べている時には見えないですが、裏では試作品が200パターンという試行錯誤を続けているのです。

では、なぜ変えるのでしょうか?

変えるからこそロングセラーになれる

継続的な変化こそが生き残る道です。

外部環境は常に変化していますよね。ポテトチップスの文脈では、消費者の味への志向は、消費者本人が気づかないレベルも含めて常に変わり続けているのです。

この変化に適応しないと、淘汰されてしまいます。生き残るためには、つまり商品として支持され続けるためには、環境変化に自らも変化させる必要があります。俯瞰すれば、「環境変化 → 自らも変わる → 顧客への提供価値が向上する」 の繰り返しです。これを続けられた商品やサービスがロングセラーとして支持される秘訣です。

***

ブレない軸


このレターの最初にご紹介した言葉、「変えないことを知っているから、全てを変えることができる」 に話を戻しますね。

たまごっちの変えないことは 「生き物を育てる」 というコンセプトでした。この考え方がブレない軸として明確にあるわけです。

コンセプトを変えないからこそ、残りの全ては変えることができます。たまごっちでは例えば、ターゲットユーザーを女子高生から女子小学生に変更したり、赤外線通信やアプリ連携の機能を追加しました。

これらの変化があってもコンセプトそのものを覆すことはありません。あくまで 「変えないこと」 の範囲の中での変更です。

ポテトチップスでは 「変えたこと」 にフォーカスを当てました。

ポテトチップスにとっての奥にある 「変えないこと」 は、これは私の解釈ですが 「自然の恵みを活かしたおいしさを届けること」 です。ポテトチップスであればじゃがいもという素材を使ったおいしいお菓子を食べてもらうことです。

この 「変えないこと」 があって、その時代ごとに最適な塩分量があり、消費者には時にはわからなくても最適配分をしてきた結果が、ロングセラーとして生き残っているのです。

 「変えないこと」 を見極めよう

今も私が忘れていない社長の言葉 「変えないことを知っているから、全てを変えることができる」 から教えられるのは、「自分の軸は何か」 です。

軸がブレずに通っていて安定していれば、軸の周りのことは変えていけます。何を変えずに何を変えるのか。

変えないことを見極めて、あとは自由に変えてみませんか。

今日のアクション

そろそろ今回のレターも終わりです。ここまで読んでいただきありがとうございます。

このレターの毎回に共通するコンセプトは 「Question Insights Action」 です。意味は、問いかけに対して示唆を得て (Insights) 、半歩でもいいので行動につなげてみませんか (Action) 、というものです。

今回の問いかけは、最初にご紹介した言葉からです。「変えないことを知っているから、全てを変えることができる」 。

  • あなたにとって 「変えないこと」 は何ですか?

  • それ以外のことで、その中から 「変えられること」 は何ですか?

今週の YouTube

今回のレターではポテトチップスのロングセラーの秘密を紐解いたので、関連する動画をご紹介します。

ぜひ見てみてください!


カルビーポテチの 「食感」 に学ぶ、独自の提供価値をつくる方法




レター作成者

多田 翼
Aqxis 合同会社 代表 (会社概要はこちら

主な事業
マーケティング, マーケティングリサーチ, 事業戦略などのコンサルティング事業※ お問い合わせは会社 HP からご連絡ください

経歴
Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立。Aqxis 合同会社を設立し代表に就任。Google 以前はインテージにてマーケティングリサーチ業務に従事。京都大学大学院 工学研究科 修了。

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