#3 戦略の上下をつなげ一貫性を持たせよう
はじめに
このレターで読者のあなたにお伝えしたいメッセージは、「戦略の上下をつなげて一貫性を持たせよう」 です。
戦略の上下とは何でしょうか?
最後までぜひ読んでみてください。
三階層フレーム (Why - What- How)

最初にご紹介したいのは三回層フレームです。
ものごとを整理してみる時には Why, What, How で分けてみるといいです。

このフレームは汎用的で、私も仕事の色々な場面でよく使っています。5W1H からの Why, What, How フレームは覚えておいて損はないです。
では、Why, What, How を戦略に当てはめてみましょう。
戦略の上下にあるもの
まずは、そもそも戦略とは何かです。あらためて戦略について考えてみましょう。
戦略と聞くとどんなイメージを持っていますか?
戦略とは、目的を達成するための 「やること」 と 「やらないこと」 の決めごとです。戦略は大きな方針です。そして戦略をより具体化したものが戦術です。戦術は戦略から落とし込んだ実行プランです。
ここまでで、戦略の三階層が見えてきました。Why, What, How に当てはめると次のようになります。
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目的 Why
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戦略 What
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戦術 How
一番上に Why となる目的があります。
目的を達成するための戦略 (What) がつくられ、戦術 (How) に落とし込まれます。
「目的 - 戦略 - 戦術」 の一貫性

このレターの始めに、「戦略の上下とは何か」 とお訊きしました。
答えは、戦略の上には目的があり、下には戦術が来ます。ポイントは3つの連動と一貫性です。目的から順番に落としていきます。
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目的の明確化
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戦略の立案 (目的 → 戦略)
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戦術への具体的な落とし込み (戦略 → 戦術)
目的・戦略・戦術の一貫性は、言葉にすると簡単なように見えるかもしれません。
しかしビジネスの場では、個々に注力するあまりに視野が狭くなり、全体最適ではなく個別最適が起こりがちです。
よく起こりがちなのは、どれだけ戦術が練られていても、戦略があいまいだったり間違っていれば成果につながらないという状況です。
ではこの話を、具体的なビジネスの例でご紹介します。
あいまいなポジショニング戦略

私が以前にある BtoC プロダクトのマーケティングに関わった話です。
参加したのはプロジェクトの途中からでした。すでにマーケティングコミュニケーションのプランニングに入っていました。
参加してすぐに私が気になったことがありました。確かに個々の広告クリエイティブやコミュニケーション施策はよくできていたものの、プロダクトの差別化が曖昧でした。
具体的には、既存の競合プロダクトとのポジショニング戦略が明確ではないように感じました。
想定されるポジショニングは、価格帯の観点から大きく3つあると思ってました。以下のように順番に、高価格、中価格、低価格です。
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認知度が最も高い競合ブランド A と同様に高機能・高価格で真っ向勝負をする
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A との直接の競争は避け、機能をシンプルにし少し価格を落とした中価格帯へずらす
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機能をさらに絞りコスパを重視した低価格帯への参入 (ただし競合プロダクトが多数)
どれを目指すのかがわからず、マーケティングコミュニケーション設計の資料を読み込んでみたり、関係者に直接聞いても、結局のところ明確な答えや社内での認識統一は私にはないように見えました。
少なくとも低価格帯市場への参入ではなさそうでしたが、本当に高価格帯で勝負をするのかはわからず、あいまいさが残りました。
明確な戦略があってこその戦術
各施策の中身や、広告クリエイティブ自体はさすがだと思うものもありました。しかし差別化戦略が明確になっていなかったので、私には戦略と戦術の一貫性があるとは思えませんでした。
望ましいのは、明確な戦略があってこその戦術です。
ご紹介しているプロダクトの事例に当てはめると、差別化戦略があり 「やること」 と 「やらないこと」 を決めて戦術への具体化です。
しかし実際のところは差別化戦略があいまいなままで、各施策にシャープさが欠けている印象でした。良く言えばオールマイティ、厳しい表現をすれば中途半端です。
まずはマーケット整理から
では、過去のことへの 「タラレバ」 を言ってもと思いつつ、どうすればよかったかを考えてみます。
ここでの内容はあくまで一例です。もしよかったらあなたご自身はどんな戦略にするかを考えてみてください。
価格帯を三つに分け、各社のプロダクトが差別化されているかでマッピングをすると、次のような状況でした。黄色が特に意識して見ていた競合ブランドです (市場でのトップブランド) 。

先ほど書いたように、ポジショニング戦略はあいまいでした。

戦略の明確化例
私の結論は中価格帯で差別化を実現します。

高価格帯には、すでに他と差別化されていたトップブランドがいます。スマホでいうところの iPhone でした。
自社プロダクトの認知や価値イメージはこれからで、高価格帯にいたトップブランドとの直接対決はまだ早いです。
中価格帯には差別化されている他社ブランドはありません。ここが狙いどころのホワイトスペースです。上の図で示したように将来的には高価格帯も視野に入れて、まずは中価格帯での差別化実現です。
自社プロダクトに機能に 「あれもこれも」 と何でも盛り込むのではなく、ユーザーへの提供価値を洗い出します。価値提供から訴求ポイントを定め、差別化を明確にします。そして、差別化につながる提供価値を基点にした価格帯の設定です。
戦略ではポジショニングの明確化とともに、ターゲットユーザーを設定します。
ターゲットとポジショニングが明確になれば、戦術であるマーケティング施策をつくります。
戦略から戦術への落とし込み
施策の考え方は、ターゲットユーザーとどこでコミュニケーションをして、どの販売チャネルを使うか、価格設定、そして差別化方針からの広告や販促などのコミュニケーションの中身です。
ちなみにこれらの3つは、マーケティングの 4P と呼ばれるフレームからです。書いた順番に、Place (チャネル) 、Price (価格) 、Promotion (プロモーション) です。
各施策の良し悪しの判断は、上位にある戦略の観点から評価します。
戦略として 「やること」 と 「やらないこと」 が明確になっているからこそ、全体最適からの戦術がつくれるのです。重要なのは、戦略を現場に共有浸透させ、全てのマーケティング施策を上位のポジショニング戦略と一貫性があるように具体化していきます。
今日のアクション
そろそろ今回のレターも終わりです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。
今回は Why, What, How のフレームをご紹介し、戦略の上下に当てはめてどう連動させるかを具体例も交えながら掘り下げました。いかがだったでしょうか?
今回のレターから、何かアクションにつながりそうなヒントをお伝えすることはできたでしょうか?
このレターからのアクションでお伝えしたかったのは、「戦略の上下をつなげて一貫性を持たせよう」 です。一般的な表現をすれば、Why, What, How の連動です。

仕事の中でなど一見すると複雑な状態に見える時には、大きく3つに分類してみてください。Why, What, How のフレームは使いやすいと思います。
私も仕事でよく使っています。例えば、企画提案、報告書・レポート作成、会議設計、メールやメッセージ、社内資料やニュースを読む時などです。
ぜひ一緒に 「Why, What, How フレーム」 を使いこなすマスターレベルを目指してみませんか?
レター作成者
多田 翼
Aqxis 合同会社 代表 (会社概要はこちら)
経歴
Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立。Aqxis 合同会社を設立し代表に就任。Google 以前はインテージにてマーケティングリサーチ業務に従事。
京都大学大学院 工学研究科 修了。
主な事業
マーケティング, マーケティングリサーチ, 事業戦略などのコンサルティング事業
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